「『星の王子さま』のバラは、王子に対してモラルハラスメントをしていたのではないか?」
この斬新な視点で書かれたのが、安富歩氏の『誰が星の王子さまを殺したのか――モラル・ハラスメントの罠』です。
本書では、『星の王子さま』の物語を新たな角度から解釈し、モラハラ(モラル・ハラスメント)の本質を考察しています。
「『星の王子さま』の世界観が好き!」という人には衝撃的かもしれませんが、「バラの態度に違和感を感じたことがある」人には、新たな気づきを与えてくれるかもしれません。
モラルハラスメントとは?
「モラルハラスメント(モラハラ)」とは、精神的・情緒的な虐待のことを指し、見えにくい形で相手を支配し、心理的に追い詰める行為です。
フランスの精神科医 マリー=フランス・イルゴイエンヌ によって提唱され、「暴力ではなく、精神的なダメージを与える継続的な攻撃」 とされています。
モラハラ加害者は、相手を否定し、罪悪感を植え付けることで支配します。
安富氏は、『星の王子さま』に登場するバラの行動が、まさにこの「モラハラの典型」だと指摘しています。
『星の王子さま』におけるモラハラ
『星の王子さま』の物語を、モラハラの視点で見ると以下のようになります。
バラの支配的な態度
- 王子さまに尽くさせる:「水を持ってきて」「風よけをして」「虫を取って」
- 感謝せず、不平ばかり:「私の言うことを聞いて当然」
- 愛情を試すような態度:「あなたなんかどうでもいいわ」
バラは、王子さまの愛情を試し続けながら、依存的な態度を見せます。
罪悪感を植え付ける巧妙な言葉

王子さまが旅に出るとき、バラはこう言います。
「私、ばかでした」「あなたを愛しているのに、それを伝えられなかった」「幸せになってね」
王子さまに罪悪感を抱かせるような言葉を残し、精神的な混乱を引き起こします。
キツネのセカンドハラスメント
旅の途中で出会うキツネは、王子さまにこう言います。
「君はバラに対して責任がある」
王子さまはすでにバラとの関係に苦しみ、距離を取ろうとしていました。
しかし、キツネの言葉によって「責任感」を刺激され、さらに追い詰められます。
これは、モラハラ被害者が周囲から「でも、相手はあなたを愛しているよ」と言われるのと同じ構造です。

モラハラ加害者の特徴
モラハラ加害者には、以下のような特徴があります。
✅ 罪悪感を持たない / 責任を相手に押し付ける
✅ 外面が良く、周囲から「いい人」と思われる
✅ 矛盾した言動をするが、指摘されても動じない
✅ 相手を依存させ、コントロールしようとする
バラの行動は、まさにこの典型といえるでしょう。
なぜモラハラに気づきにくいのか?
モラハラの最大の特徴は、「愛情の仮面」をかぶっていることです。
加害者は「あなたのため」と言いながら、相手を支配します。
被害者は「愛されている」と信じ込み、関係から抜け出せなくなります。
王子さまも、バラを愛しながらも苦しみ、結局は逃げるように旅に出ました。
どうすればモラハラの罠から抜け出せるのか?
もし、あなたが「星の王子さま」と似た状況にあるなら、以下のポイントを意識しましょう。
✅ 「愛」と「支配」を区別する
- 相手の言動に「罪悪感を植え付ける意図」がないか確認する。
- 本当に「対等な関係」かどうか考える。
✅ 距離を取ることを恐れない
- 自分を大切にするために、離れる選択も必要。
✅ 信頼できる人に相談する
- モラハラは、周囲から見えにくいもの。第三者の意見を聞くことが大切。
さいごに
『誰が星の王子さまを殺したのか』は、『星の王子さま』を新たな視点で読み解き、モラハラの本質を考えさせる一冊です。
この本を読むことで、「愛に見せかけた支配」に気づき、健全な人間関係を築くヒントを得られるかもしれません。
「大切なものは目に見えない」。
でも、目に見えない支配やハラスメントにも気づくことが大切なのです。
あなたは、王子さまと同じように、知らず知らずのうちに罪悪感を抱えていませんか?
もし心当たりがあるなら、この本を読んでみてください。