ひと昔まえ、スピリチュアルがまだ、オカルトと呼ばれていた時代、私は「何言ってんだ?」という感じで、断然、科学で「ありえない!」とすっぱ斬る大槻教授(物理学者で早稲田大学名誉教授)派だった。
そんな私がまさか、「ムー」の三上編集長の知識量に感銘を受け、尊敬することになるとは……(笑)。
実は、三上編集長(三上丈晴氏)は、ただのオカルト好きなおじさんではありません。
筑波大学自然学類で、ガチガチの「物理学」を専攻されていた理系のエリートなんです。
理論物理の素養があるからこそ、彼の話は単なる空想に留まりません。
最先端の科学と、古くから伝わる神秘。
その両方の接点を見事に言語化する圧倒的な知性に触れたとき、「科学的にありえない」と決めつけていたのは、私の側の知識不足だったのかもしれない……と気づかされました。
そんな三上編集長のお話にも通じる、現代物理学の最前線にある「驚くべき仮説」があります。
それが、「ホログラフィック原理」です。
この記事では、できるだけわかりやすく、この理論の科学的な背景をお伝えしたいと思います。
ホログラフィック原理とは?
ホログラフィック原理とは、簡単に言うと、
私たちが生きている3次元の世界は、どこか遠くにある2次元の「情報」から投影されたものかもしれない
という考え方です。
ホログラムをご存じでしょうか。
クレジットカードやお札についている、角度によって立体的に見えるあのキラキラしたシール。あれは、2次元のフィルムに記録された情報を、光を使って3次元の像として再生しています。
ホログラフィック原理が言っているのは、この宇宙も、それと似た仕組みでできているのではないかということです。
私たちが見て、触れて、体験している「立体的な世界」は、実は2次元の情報が投影された「映像」のようなものかもしれない。
この理論はどこから生まれたのか ── ブラックホールの謎
この不思議な理論は、ブラックホールの研究から生まれました。
1970年代、イスラエルの物理学者ヤコブ・ベッケンシュタインは、ある思考実験をしました。
「熱いコーヒーの入ったカップをブラックホールに投げ込んだら、そのカップが持っていた”情報”はどこへ消えるのか?」
熱力学の法則では、宇宙全体の情報(エントロピー)は減少しないはずです。でも、ブラックホールに吸い込まれたら、情報は消えてしまうように見える。
そこでベッケンシュタインは、大胆な仮説を立てました。
「ブラックホールに落ちた情報は、消えるのではなく、ブラックホールの”表面”に保存されているのではないか」
つまり、3次元の物体が持っていた情報が、2次元の表面に記録されるという考えです。

ホーキングによる証明
ところが、計算を進めるうちに、ホーキングは逆のことを発見してしまいます。
ブラックホールは熱を放射している(ホーキング放射)。そして、ブラックホールのエントロピー(情報量)は、体積ではなく、表面積に比例する。
これは驚くべき発見でした。
この発見は「ベッケンシュタイン=ホーキング公式」として知られ、現在も物理学の最前線で研究されています。
でも、「表面積に比例する」って、どういうこと? 次のセクションで、もう少しわかりやすく説明しますね。
ブラックホールは「情報のセーブデータ」置き場

ここで少し、そもそもブラックホールって何?というお話を。
実は私は、ブラックホールの奥には「究極に凝縮された星」が居座っているなんて、最近まで知りませんでした。
図にあるように、中心にはかつて巨大だった星のなれの果て(核)がギュッと凝縮されていますが、ホログラフィック宇宙論で注目するのは、その奥ではなく、手前の「シャボン玉のような膜(地平面)」です。
この膜は厚みのない2次元の「面」ですが、ここに宇宙のプログラムの「セーブデータ」が貼り付いているんです。
先述のとおり、このシャボン玉の膜の面積(2次元)と、そこに保存できる「情報量」は同じです。
普通、中身(3次元)が大きければ大きいほど、たくさんのデータが入る(体積に比例する)と思いがちですよね。 でも、本当は「表面の皮の面積さえ決まれば、そこに映し出せる情報(データの容量)も決まってしまう」。
つまり、中にあるように見える3次元の世界は、すべて外側の膜にあるデータの投影(コピー)にすぎないということ。
本体は、その2次元の薄い膜。
私たちが「現実」として体験している立体的な世界は、そこから映し出された壮大な3D映像なのかもしれません。
宇宙全体に広げる ── トフーフトとサスキンドの洞察
1990年代、ノーベル物理学賞受賞者のヘーラルト・トフーフトと、スタンフォード大学教授のレオナルド・サスキンドが、この考えを宇宙全体に拡張しました。
彼らの主張はこうです。
「ブラックホールだけでなく、この宇宙全体が、どこか遠くにある2次元の面に記録された情報の”投影”なのではないか」
しかも驚くことに、彼らはこの世界をデジタルなものとして捉えています。
コンピューターが0と1の二進法で情報を記録するように、世界のすべてのモノ・コトは、0と1のデータとして、宇宙の境界面に記録されている。
私たちが体験している3次元の世界は、その情報が投影された「映像」のようなもの。
映画館で、スクリーンに映し出される映像を見ているようなものかもしれません。映像は目の前にあるけれど、「実体」はあくまでも記録メディアの方にある。
ひも理論との一致 ── 別々の山の頂上で出会った
さらに興味深いのは、ひも理論(超弦理論)という、まったく別のルートから研究を進めていた物理学者たちも、同じ結論にたどり着いたことです。
1997年、プリンストン高等研究所のフアン・マルダセナは、「AdS/CFT対応」という理論を提唱しました。
これは、重力のある3次元空間は、重力のない2次元空間と完全に等価であるということを数学的に示したものです。
別々の山を登っていたと思っていた研究者たちが、頂上でばったり出会い、同じ山を登っていたことに気づいた。
この発見によって、ホログラフィック原理は、最先端の物理学のメインストリームに躍り出ました。
私たちの現実は「幻影」なのか?
「じゃあ、私たちが見ているこの世界は、幻なの?」
そう思うかもしれません。
でも、「幻影」という言葉は、少し誤解を生みやすいように思います。
ホログラフィック原理が言っているのは、「この世界が存在しない」ということではありません。
むしろ、「この世界を記述するのに、実は3つの変数(縦・横・奥行き)ではなく、2つの変数で十分である」ということ。
私たちの脳が「立体」として認識しているものは、実は2つの要素の組み合わせにすぎない。
一種の「錯視」のようなものかもしれません。
まだ証明されていない、でも真剣に議論されている
正直に言うと、ホログラフィック原理は、まだ数学的に完全には証明されていません。
でも、世界中の物理学者たちが、この理論を真剣に研究しています。
なぜなら、この理論には、量子力学と一般相対性理論を統合する可能性が秘められているからです。
この2つの理論は、現代物理学の2本柱でありながら、どうしても相容れない部分がありました。
ホログラフィック原理は、その2つをつなぐ「架け橋」になるかもしれない。
ビッグバンがどう始まったのか。ブラックホールの内部で何が起きているのか。
そうした宇宙の根源的な謎を解く鍵が、この理論に隠されているかもしれないのです。
この視点が教えてくれること
私がこの理論に惹かれるのは、単に「不思議だから」ではありません。
「現実は、私たちが思っているほど、動かせないほどガチガチに固定されたものではないかもしれない」 この視点が、私に大きな希望を与えてくれるからです。
もし、この世界が「2次元の情報」によって記述されているのだとしたら。
それは、あらかじめ緻密にプログラミングされた「壮大なゲームの世界」のようなものだと言い換えることができるかもしれません。
一度プログラミングされたコードそのものは、ゲームの最中に書き換えることはできないかもしれません。
でも、ゲームには必ず、いくつもの分岐点や隠されたルートが用意されています。
プレイヤー(ハイヤーセルフ)とあなたが「今世で体験したかったルート」は、この世界のデータの中に必ず存在しています。
私たちの意識や意図、日々の選択は、その無数にあるルートの中から「どの景色を映し出すか」を決めるスイッチのようなものです。
このブログで繰り返しお伝えしている「未来は選べる」という考え方。
それは、何もないところから奇跡を起こすことではなく、すでに用意されている「最高のプログラム」を読み込み、体験しにいくこと。
ホログラフィック宇宙論という壮大な仕組みを知ることは、私にとって、人生というゲームのコントローラーを自分の手に取り戻すことでもあるのです。
参考資料
この記事を書くにあたって、以下の資料を参考にしました。より深く知りたい方は、ぜひご覧ください。
- 日経サイエンス「ホログラフィック宇宙」
- 日経サイエンス「重力は幻なのか? ホログラフィック理論が語る宇宙」
- 無印良品 くらしの良品研究所「この世界は幻想なのか(後編)」
- Wikipedia「ホログラフィック原理」
- 京都大学 高柳匡教授「量子エンタングルメントから創発するホログラフィック宇宙」(PDF)

