はじめに
今日は、モラルハラスメントについて書かれた本を紹介したいと思います。
大学の教授でもある安富 歩氏が書かれた
『 誰が星の王子さまを殺したのか―モラル・ハラスメントの罠』です。
この本は、児童文学書で有名なサンテグジュペリの「星の王子さま」の話を、実は”星の王子さま”に対する”バラ”のモラルハラスメントだという、斬新な視点でかかれています。
なので「星の王子さま」の愛読者の方は、読まないほうがいいかも知れません(-_-;)
私は、この名著と呼ばれる「星の王子さま」の良さが理解できずにいたので、安富先生の解釈にすごく納得がいきました。
「星の王子さま」を読んで何かしら引っ掛かりを感じた人には興味深い本になるかもしれません。
不安症を抱える人は、とても繊細で人の痛みのわかる優しい人が多いように思います。
それ故に罪悪感を抱きやすく、モラハラ加害者のターゲットにされやすかったり、気付いていないけど被害者だったりする場合があるのではと、心配します。
モラハラは、気づいていないだけで、身近なものかもしれません。
モラルハラスメントについて
モラルハラスメント、モラハラとは、何なのか。
Wikipediaには、こう解説しています。
フランスの精神科医、マリー=フランス・イルゴイエンヌが提唱した言葉。
Wikipediaより抜粋
安冨歩は「moralモラール」というフランス語の「精神の、形而上学の」という意味を考慮に入れ、「harcèlement moralアルセルモン・モラール」を「身体的ではなく、精神的・情緒的な次元を通じて行われる継続的ないじめ、いやがらせ、つきまといなどの虐待」と解釈している。
「モラル・ハラスメント」が成立するためには、「いやがらせ」が行われると共に、それが隠蔽されねばならない。
「いやがらせ」と「いやがらせの隠蔽」とが同時に行われることが、モラル・ハラスメントの成立にとって、決定的に重要である。
加藤諦三は、「愛」だと思い込んで相手を支配する「サディズムの変装」を、モラルハラスメントをする人自身が、「愛」だと思い込んで理解できない側面を指摘している。
モラル・ハラスメント加害者(モラル・ハラスメンター)の特徴・行動パターン
*罪悪感を持たない。責任を他人に押し付ける。* 強い者には弱く弱い者には強い。
* 猫なで声や慇懃無礼
* ある事柄においてのみ感情的恐喝をするのではなく、もともと感情的恐喝が出来る人格である。
* 立派な言葉を使う。しかしその人の日常生活や内面の世界は、その立派な言葉に相応しいほど立派ではない。
* 際限もなく非現実的なほど高い欲求を周囲の人にする。
* 縁の下の力持ちとなり、自分は「愛の人」となる(本質にあるのは憎しみと幼児性)。
* 子供に反抗期がない(信頼関係がない)。
* ターゲットにする相手に対し、前に言ったことと今言うことが矛盾していても、何も気にならない。人を怒鳴っておいて、それが自分にとって不利益になると分かれば態度をがらりと変える。
* 他人の不幸は蜜の味。
* 恩に着せる(自己無価値感が基にある)。不安を煽り、解決し、相手に感謝を捧げさせる(マッチポンプ)。その一方で自分への被害は甚大な被害に扱う。恩を売られるのを拒む。
* しつこい人であることが多い。心に問題がある。
* パラノイア誘発者としての側面がある
Wikipedia
[パラノイア]☞ 不安や恐怖の影響を強く受けており、他人が常に自分を批判しているという妄想を抱くもの
モラハラ的解釈-追い詰められていく星の王子さま
モラハラ的側面からみると、この物語は、
王子さまは、バラからモラル・ハラスメントを受けていて、それに耐えきれず、小さな自分の星から逃げ出して、旅にでます。
星めぐりの旅の最後に地球にやってきた王子さまは、友達になったキツネからバラについて「君にはバラに対する責任がある」と罪悪感を抱かせるセカンド・ハラスメント(二次被害)を受けます。
繊細で心優しい王子さまは、精神的混乱に陥り、毒ヘビに噛ませて自殺した、というやりきれない結末になります。
いろんな解釈-オリエントラジオあっちゃんの場合
以前、しくじり先生でこの「星の王子さま」を、オリエントラジオのあっちゃんが、解説していました。
それによりと、バラの水やりをしたり、風よけの世話をしたり、そういう時間が愛を育て、親密になっていく。
それを教えてくれたキツネはとっても良い奴だと、話されていました。
重要なことは、対等であること、相手を尊重するこころを持っているか
だけど、この本では、キツネはセカンドハラスメントの当事者だとしています。
キツネの言うことは、相手を思う「思いやり」が、互いに、あってこその話だと思います。
お互いに対等で、お互いに相手を思いやる気持ちがあれば、一緒の時間がより絆を強め信頼を得ていくことが出来ると思うんです。
このお話のなかで、 王子さまは、確かにバラに尽くしました。
だけど、バラはどうでしょう。
尽くしても尽くしても不服ばかり。
心が折れてしまっても、仕方がないと思います。
バラは、王子さまのことを、考えていたのでしょうか。
王子さまは、疲れ切って、自分の慣れ親しんだ大事な自分の星を出ようとまで、思いつめました。
そして、別れの際、巧妙に王子さまに罪悪感を感じさせるよう、しおらしい言葉を残します。
「私、ばかでした」「許してちょうだいね、お幸せに」「あなたを愛している、あなたが、それに気付かなかったのは私のせいよ」
繊細で純粋な王子さまを、混乱させ深い痛手を追わせるに十分なことばです。
モラルハラスメントの加害者の厄介なところは、巧妙に攻撃が隠され周りから良い人だと思われていることが多いところです。
時には被害者にすら気付かさず、支配していることもあるとか(恐)
「あなたの為だ」などいって愛情だと信じ込ませる手口です。
何より怖いのは、被害者に対して罪悪感を感じないということです。
自分が否定ばかりされていたら、無価値感にさいなまれ、そこから逃げ出したくなるのは、当たり前。
絶え絶えの自尊心をかき集めて、ようやくそこから抜け出しても、今度はセカンドハラスメントが待っている。
王子さまを、さらに追い詰めるキツネの正論-セカンドハラスメント
お話の中でのキツネの存在です。
王子さまにとっては、傷心の旅だったんです。
これ以上、バラといると自分の心が壊れそうだったので、旅にでたのです。
「あなたには、世話をしてきたバラに責任がある」というキツネの言葉は、
罪悪感を抱えている王子さまにとって、さらに自分を責めることになります。
現実社会でも、セクハラやパワハラを勇気をもって告発しても売名行為だとか、慰謝料目当てだとか、世間の声は優しいものばかりではありません。
誰かを批判することは、簡単で、自分の正義感が満たされるからでしょうか。
軽いノリで、言う人もいるように思います。
何度も言いますが、モラルハラスメントは、巧妙なんです。
相手への罪悪感をうまく刺激して、支配しようとする。
また、そういう支配しやすい相手を選ぶのです。
なので、わかりにくいのです。
愛のみせかけに要注意-何でもかんでも背負う必要はない
私の身近にも、支配を愛だと思っている人がいました。
相手を本当に信頼しているのなら、相手の選択や決断を尊重するものだと思うのだけど、それを愛だと信じているので、離れることができない。
この人がいなければ、自分は生きていくことが出来ないとさえ思うようになる。
王子さまの星にいるバラは特別だと自慢していた、けれど地球には、たくさんのバラがいる。
王子さまは、バラの外見の美しさに惑わされたけれど、同じ美しいバラがこんなにあるのなら、その中に王子さまを思いやり、楽しく喜びを与えあえるバラがいるはず。
そういうバラだったら、今頃、王子さまは、小さな自分の星で、楽しく幸せに暮らしていたのではと、残念です。
この物語の有名なセリフ
「大事なものは目には見えない」
その見えないものこそが、モラハラだとしたら、ちょっと怖い物語ではあるけど、的を得てるように思います。