社交不安障害の根本的問題 -SAD④

ベビーカーを囲むぱぱとまま 愛着・AC
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社交不安障害と愛着スタイル

不安の根っこには、愛着問題がある

社交不安障害の、ありのままの自分でいることに安心感が持てず、他者の評価を気にしすぎてしまう理由には次のようなものがあります。

他者の評価を気にしすぎてしまう理由
  • 完璧な自分でいないと駄目になってしまうという考えの囚われ
  • 不完全な自分が暴かれることへの恐れ
  • 父親などに恐怖や葛藤を抱えていたりすること

そして、これらの問題を引き起こしているのが、不安定な愛着の問題だと、著者は述べています。



愛着とは、幼い頃の養育者との間に育まれる絆で、心理的なものを超えた生物学的な仕組みだと考えられています。
この愛着の仕組みが他者との対人関係の土台ともなり、またストレスや不安を和らげる仕組みにもなっています。

不安定な愛着の問題は、過去の親などの関係を反映したので、幼いころの体験の影響が強い。
しかし、大人になってからでも安定型から不安定型になったり、不安定型から安定型に変わるケースも少なくないそうです。

Minori
Minori

不安定型から安定型に変わるケースもあると聞くと、嬉しくなります。
岡田尊司先生は、「愛着障害の克服」や、「愛着アプローチ」など、愛着問題回復の本を執筆されています。

経験からいって、本を読むというインプットだけでは、なかなか目に見えた回復には至らないと思います。
(私の意思が弱いだけかも知れませんが(-_-;))

身近な信用出来る人やカウンセラーなどのサポートを受けて、伴走して貰えれば、心強いです。

自分の話を聞いて貰うことにさえ、遠慮してしまうときは、金銭を払って、ビジネスとして聞いて貰う道もアリだと思います。

どんな形でも、応援して貰えるだけで、嬉しいものです。

オキシトシンの働き
愛着が安定している人は、オキシトシンというホルモンが豊富に分泌されます。
このホルモンは不安やストレスから我々を守ってくれる働きがあり、他者との親密な関係を持ち、それを維持しやすくなるだけではなく、様々な緊張やストレスから身を守ってくれます。

愛着スタイル

愛着スタイルには、安定型、回避型、不安型(両価型)、恐れ・回避型、未解決型があります。
不安定な愛着を改善するためのプログラムも開発されていて、プログラムに基づいたカウンセリングを受けることが出来るそうです。

安定型

過度に依存することも、過度に孤立することもなく程よくバランスのとれた関係を維持しやすい。安全基地となる存在との関係がうまく機能している。

回避型

親密な関係を避けたり、気持ちや本音を抑えたり表面的にだけ他者と関わる。

不安型(両価型)

相手にどう思われているか他人の評価を気にする傾向が強い。
その一方で、自分の期待に反することがあると、強い失望や怒り、嫌悪を示す。依存しているのに責めてしまうという反応も起きやすい。

恐れ・回避型

親しくなりたいが、接近すると拒否されるのではないか、嫌われるのではないかという恐怖心があり、近寄りたいが近寄れないというジレンマを抱えやすい。一旦親しくなると猜疑心や独占欲の強い面が 顔をもたげ、ぎくしゃくする要因になる。

未解決型

未解決の愛着の傷を引きずっていて、親や特定の存在のことを考えると、それだけで不安定な気持ちになる。この未解決型は他の不安定な愛着タイプと併存することが多い 。

社交不安障害の特徴と改善

不安な人の特徴的行動、回避と安全確保行動

回避行動

社交不安障害の回復を妨げる大きな要因に「回避」があります。
回避してしまうのは、体に刻み込まれた恐怖心のためで、不安にとりつかれていると、コントロールがきかずに体が拒否、取り組もうと思っても、怖気ついてやめてしまうことになります。

それを繰り返していると、自信も能力もなくなり、今まで何とかやりこなしてきたものですら、怖くなり、苦手で回避してきたことが、恐怖の対象として固定化してしまいます。

安全確保行動

安全確保行動は、安心感を高めるための予防的な行動のこと。
会食する機会を避けたりすることは、回避行動で、目立たないように隅の席に取ろうとすることは、安全確保行動になるそうです。
あと、失敗しないように過剰にリハーサルをしたり、代わりにしゃべってくれる人と一緒に行動しようとすることなども、安全確保行動だそうです。

自信喪失と苦手意識の固定化

社交不安障害は、回避することによって症状が固定化、広範化を生じ、回復が妨げられる。なので、克服には回避をやめていくことが、とても重要。
とはいえ、回避をやめ、苦手な状況に立ち向かっていこうと、言われても怖気ついてしまいます。

社交不安障害の改善方法

ではどうすればいいのか。
それには、「慣れる」ことが、不安や恐怖心を取り除くために最も有効だと、著者は述べています。

人間はどんなことにも慣れる力を持っている。
不安や恐怖心を取り除くために、最も有効なのは実際に行動して恐れていることに慣れてしまうことなのだ
最初は、苦労してでも、やりこなせる経験を積んでいくと、不安や恐怖は大幅に減っていくのである。

「社交不安障害」岡田尊司著

今までの、苦手意識を固定化してしまう悪循環から、好循環に変えていく必要があるとのこと。
それは、エクスポージャー(暴露療法)と呼ばれ、現在のところ、社交不安障害に最も効果的な治療法だそうです。

SADにおける悪循環を逆回転するフロー
参照元 「社交不安障害」岡田尊司著

チャレンジ設定のコツ

この回復のプロセスがうまく進んでいくためのポイントは少し努力すれば達成可能な課題を設定しチャレンジするということ。

成功率が低い無理なチャレンジだと、自信をなくしてしまう危険性がある。逆に、小さな目標だと、100点以外はどれも0点だという思考の強い人だと、やっても無駄と、回復が妨げられやすい。

なので、自分なりに達成可能なチャレンジをすることによって、チャレンジすることの恐怖心が減る。そして、課題をどうにかやりこなすことでスキルや自信が高まり、それがさらにチャレンジする意欲につながっていく。

大きな目標も小さなステップを刻んで達成していくということが基本になる。

完璧さより大事なことは、誠実に自分のつとめを果たすこと

社交不安障害の人は、自分に完璧なパフォーマンスを要求しがちです。
それ以外は、恥ずかしい失敗と思い、あってはならないと、考えがち。

チャレンジには失敗はつきものであり、難しく慣れていないチャレンジをすればするほど、失敗のリスクが高まるのは当然。
大事なのは、自分は、アナウンサーや話のプロではないのだから、あがったり、うまくしゃべれなかったりするのは、ごく自然なこと。

大事なのは、誠実に自分のつとめを果たすことだと言い聞かせること。

チャレンジしようと思っても、ブレーキがかかってしまうのは何故?

チャレンジしたい気持ちがある一方で、自分には怖くてできない、やってもどうせ失敗する、嫌な思いをするだけだ、本当はそんなことはしたくない、このままでもいいなど、気持ちを鈍らせる思いが、心のなかで渦巻いているもの。

しかしその多くは事実というよりは、思い込みや心の中の恐れにすぎない。
本当の敵は、自分の心の中にある。

チャレンジを阻む心の抵抗の背景には次のようなものがある。

  1. 恥をかくこと、また失敗することへの恐れ
    恥をかくことや失敗すること、また傷つけられることや面目を失うことへの恐れのため、頭では動きたいと思っているが実際には動けない。そこにはトラウマが関係している場合もある。
    高い目標を自分に課し過ぎて、それを上手くやりこなす自信がないという場合もある。
    失敗への恐れは、どうせうまく行かないという思い込みとも表裏一体で結びついている。
  2. トラウマを克服できていない場合
    失敗体験が強いトラウマとなり、チャレンジを困難にしている場合。
  3. 完璧主義による高いハードル
    高い目標や理想の自分へのこだわりがあるが、現実の自分がそれを上手くやりこなせないか、やりこなせたとしても大変な負担がかかり気力を使い果たしてしまうため、継続することが難しい。
  4. アイデンティティとの不協和
    そのチャレンジ自体に積極的な意味や価値を感じておらず、チャレンジと主体的な意思との間にズレが生じている場合。
    例えば本当は他にやりたいことがあるのに、自分の興味や関心のないことに頑張りを求められ本心とのギャップが広がってしまっている。
  5. 疾病利得への安住
    回復したとしても、また辛い事をやらなければならなくなるだけだという思いが心のどこかにあり、自分が回復することを望まず、現状にとどまろうとしている場合もある。
    その状況を脱するには強い決意が必要である。
走って逃げる人

社交不安障害とパニック

パニック障害にしろ、社交不安障害にしろ、克服を困難にするのは、その苦しさが制御不能に思え、不安と恐怖に圧倒されてしまい、理性の力などどこかに消し飛んでしまうこと。
パニックの怖さは、自分で自分の状態をコントロールできないこと 。

破局的思考と視野狭窄

パニックになりやすい人には特有の思考パターンに、破局的思考と呼ばれるものがある。
破局的思考とは、ごく小さな悪い兆候を最悪の事態のように受け止めてしまい、「もうだめだ」と絶望的な結論に陥ってしまうことである。全く大したことではなくても些細な兆候を極端に悪い方に解釈し、自分で自分を追い詰めてしまう。

破局的思考に陥る場合は、心の視野が狭まる視野狭窄も、ともなっている。
もう少し大きな視点でみれば、それほど思いつめる必要もないのに、視野が狭まって悪いことしか目に入らなくなってしまい、「もうだめだ」と思ってしまう。

視野を広くとる章の中に、社交不安障害の見られている自分という意識が強すぎるという問題と根源について、書かれていて、とても興味深かったので、長文になりますが、全文を引用させてもらいます。

社交不安障害の人は、「見られている自分」という意識が強すぎるという問題だ。見られているという意識が、自分らしく振る舞う自由さを奪ってしまうのである。その根源は、常に厳しい目で見張られて、ありのままのその人を認めるよりも、良いか悪いか、優れているか劣っているかといった視線で評価されることが多かったという状況に長年置かれていたことだろう。
評価されることを意識して、良い自分、優れている自分を見せなければというりきみが生まれ、それが自然に自分らしく振る舞うことを妨げてしまうのだ。
この呪縛を解くためには「見られている自分」という意識と結びついた「低い評価(笑われること、けなされること、期待を裏切ること)への恐れ」を打破する必要がある。
「見られている自分」を「見ている自分」へ、評価するのは他人ではなく、自分だという視点への転換が必要なのである。
また低い評価を恐れるのではなく、低い評価を受けても負けないことこそが、格好いいことであり、笑われたり、けなされたりするものこそ真の価値があるのだという価値観の転換を必要となる。
実際に歴史を紐解けば真に価値あるものは笑われたり貶めされたりするのがむしろ通例であった。

「社交不安障害」岡田尊司著より引用

パニックへの対処 コントロールを取り戻そう

パニックとは対処できない事態に対する過剰反応だと言える。
パニック状態から脱する方法は、コントロールを取り戻すこと。
たとえわずかでもコントロールできるという感覚を取り戻せば状況は変わる。
過剰反応を止め、コントロールを取り戻すには、次の3stepで行動するのが有効。

  1. 視野を広く取り周囲を良く見て「落ち着け」と心の中で言う
  2. ゆっくり行動し、ゆっくり呼吸する(呼吸を整える)
  3. 緊張をゆるめるための対処行動をいくつかやってみる

対処行動⇒手を握りしめる、冷たい水を飲む、肩を上げ下げしたり回すなど。

ほんの小さなことでも自分の意思で行動し、対処している感覚がコントロールを取り戻すことにつながる。

Minori
Minori

著書には、エクスポージャー(暴露療法)をはじめ、たくさんのエクササイズがあります。
質問に答えるかたちで、自分の思い込みに気付けるものも多く、あります。

私は、正直、慣れるためとはいえ、自分から不安な状況に、わざわざ飛び込むのは、きついです。
ただ、避けられない場合は、「やるべきことをやる」ことに心がけています。
著書のなかにもありましたが、誠実に自分のつとめを果たすことを第一に考えるように、努力しています。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。
あなたに、幸あることをお祈りします。

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