カサンドラ症候群のメカニズム-怒りに隠された恐怖や不安

愛着・AC
スポンサーリンク
スポンサーリンク

「空気が読めない夫と突然キレる妻」の心理学を読んで

この記事は、臨床心理士の滝口のぞみ氏の著書
『「空気が読めない夫と突然キレる妻」の心理学』を、参考にしています。

滝口のぞみ氏は、前に紹介した精神科の宮尾益知医師のどんぐりクリニックで一緒に働き、今は青山こころの相談室の代表をされています。
カサンドラ症候群の夫婦のカップルカウンセリングを数多くされており、生の声が反映されている内容で、とても読みやすい本です。

残念ながら、生産終了しているようで、中古でも定価以上の値段がついています。
私は、探しまくってyahooオークションで、お安く購入できました。
この記事を書いている段階では、まだ数冊あるようです。
電子書籍なら、定価で購入できます。

この記事では、妻が追い詰められたメカニズムについて、次の記事では、メカニズムを理解した上で、再建する方法を書いていきます。

カサンドラ経験のある私には、この本の一番の情報は下記の部分でした。

重要!

-こころの理論とミラーニューロン-
妻の混乱は、夫の他者視線を持てないことが原因

-人が生きる環境に不可欠な安全の喪失-
最初の不安が解決しないままなことが、妻を不安に陥れる

詳しくは、本文で説明していきますね。

Minori
Minori

私は、物理的距離をとることがどれほど、心の平和につながるのか身に染みているので、別れることも十分ありだと思っています。

ただ、共感性の欠如は、いくらかは情報で補えることを知り、再建できる可能性があるのなら、それを試してからでも遅くはないと思いました。

まずは、メカニズムを知り、心のもやもやをすっきりさせてみましょう。

カサンドラ症候群のメカニズム

まず、カサンドラ側がヒステリーをおこしてキレている状態だとしても、それまでに、たくさん傷つき悲しんできたということを、知ってください。
何とか関係修復をしたくて、理解し合いたいと努力した結果、よけいにこじれて、途方に暮れているのです。

何で、こうなったんだろう。
どうして、わかってくれないんだろう。
この、わからなさが、妻を不安にさせ、恐怖を感じ、怒りへと変わっていくのです。

著者は、このわからなさのモヤモヤを「不安の雲」と例えています。
まず、この雲の正体を暴いていきたいと思います。

カサンドラ症候群になった妻と、その夫について書かれた本ですが、それ以外の親子や職場などで、困っておられる方にも役立つ内容です。

最初の違和感が暗雲のはじまり

そもそも、何故、そんな人と結婚したのかと言われることが、カサンドラ側には辛いことです。
自分で選んだ人、見抜けなかった自分が悪いと思い、我慢している人が多いのです。

でも、違うんです。
空気が読めない彼も、デートは得意なんです。
自分で計画をたて、コントロールできるから。
そのうえ、物腰が柔らかく、そこそこ以上の経済力があれば、この人に決めちゃいますよね。

しかし!
生活をともにすれば、いろんな困った状態になるし、子供が生まれれば尚更です。
親類も増え、人間関係も複雑になります。

その中で、ズレが生じてくるわけですが、最初に困った状況になったときの夫の対応に、妻は釈然としないまま、ずっとモヤモヤを抱えているのです。

結果的に、問題なく済んだとしても、妻は、芽生えてしまった違和感や不信感をぬぐえずにいます。
その不信感を、払拭しようと夫に歩み寄るのですが、それを夫は、不満だと感じてしまうそうなんです。
また、妻も、夫の不満を感じてしまい、もやもやします。
そういうことが日常で繰りかえされるのですが、夫と妻との問題の後の受け止め方に大きな違いがあるのです。

夫は、ひとつひとつの問題が、それぞれ独立したことで、それぞれ解決済みとしています。
謝罪をしたことで、それで終わっています。

でも、妻にとっては、その事務的な対応に、取り残された気分になることが問題なんです。
なので、妻にとっては問題は変われど、共感してもらえない、心細さはいつも同じで、それが解決していないんですよね。

なので、いつ、また問題がおこるかもしれない。
いつまた、不安な心細い思いをしなくてはならないのかと予期不安に悩まされていくのです。

妻は怒っているのではない、傷つき悲しんでいる

そして、妻の心に、その雲はどんどん広がり暗雲たれ込める状態となっていきます。

海に浮かぶ船
虹の明るい海と暗雲たれこめる暗い海

そして、不安が恐怖になり、怒りになり、その怒りを自分でも制御できなくなっていく…。
どんどん嫌な自分になっていくのです。

キレるまでに至った心の傷。
妻は、夫にわかってほしいだけなのです。
それが理解できない夫は、妻の不安=不満だと取り、相手にしないか、見ないふりをします。
時には、逆切れしたり。
それがまた、妻の傷を広げるのです。
その悪循環。

妻は、気持ちを汲んでもらったり共感してもらって、安心したいだけなんですけどね。
夫にとっては、問題自体は解決しているのに、妻が納得していないことにいら立ちを感じてしまうんです。

認識のズレがあることは、明らかなんだけど、うまく噛み合わせていけないんですよね。

妻との関係は、需要と供給?

夫が、ひどい奴になっていますが、決して悪気があってしていることでは、ありません。
(妻もそれが、わかっているので、よけいに苦しいのですが)
それどころか、妻の役に立ちたいと思っているし、妻の要望にこたえたいとも思っています。

著書に、夫は、妻が何をしてほしいのか言ってほしいし、それに応えたいと思っていると書いています。

でも、そこが問題らしいです。
その考えには、需要と供給のパターンがあると著者は言います。

つまり、
妻の要請(需要)に、夫が応える(供給)という、消極的で善意の形になるからだそうです。

ここは、私的に「なるほど」と思った部分なので、著書から引用させてもらいますね。

まるで夫が「妻の望んでいることを叶えてあげている」かのような「妻の要請に応える夫の善行パターンになりやすいのです。

妻が夫に「妻の要請」を伝えたとしても、夫がそれを「ちゃんと聞いてくれない」と、妻はひたすら「要請(需要)」という形で同じことを言わなくてはなりません。

妻はさらにdemandingな(要請が厳しいとか、注文の多いの意)文句ばかり言う人にさせられてしまうのです。

「空気が読めない夫と、突然キレる妻」の心理学より

他者の視点からみる力

カサンドラ症候群を妻にもつ夫は、他者の視点で見る力が不足しているそうです。

著書のなかでは例として、「持ち寄りパーティで、妻の手料理だけ残っていたら」という質問に対して、どうこたえるかを挙げています。

一般的な答えは「料理した人(妻)は傷つくだろう」になります。
なので、妻の辛い状況に気付き、気遣いが出来ます。

しかし、夫は、「まずいのかな」「料理が他にもたくさんあるからかな」「人気がないんだな」という答えだそうです。
そこには、「妻がどう感じているだろう」と察してあげる気持ちがありません

それは、「妻はどう感じるだろうか」という他者の視点から状況を見ること、想像することが苦手だからだそうです。

気持ちを察してもらえない妻のことを下記のように述べています。

夫は、悪気なく思ったことを言い、妻はそこに悪意がないことを知りながらも、傷ついてしまいます。
正直な言葉にいちいち傷ついたり、悪意のない人に怒ったりすることに罪悪感を抱いています。
しかし、そこには夫が妻の心を読んでくれていない、その必要がある存在なのだということにも気づいてくれないという絶望があるのです。

機能ではなく、ひとりの心を持った人間である「他者としての自分」に気づいて欲しいのです

「空気が読めない夫と、突然キレる妻」の心理学より

妻は、夫に悪意がないことがわかっているのです。
だから、苦しいんです。

自分を責めてしまうんです。

そして、悪意がなくても、やっぱり傷つくんです。
だって、人が生きる環境に不可欠な安全を喪失しているんですから!

空気を読めないことを説明する「心の理論」

心の理論とは、
他者の心は自分とは違うということを認識し、他者の心を類推し、理解する能力で、イギリスの心理学者バロン=コーエンが定義した理論です。

他者のこころの状態を類推することで、相手の行動の意図や感情を予測し、理解します。
それによって自分を客観的に捉えることができ、比喩や隠喩、言外の意味を理解できるそうです。
この理論を使うことで複雑な対人関係に柔軟に適応しているそうです。

ここでは、割愛しますが、サリー・アン課題などがあります。

相手を傷つけない力=ホワイトライ

嘘はいけないけれど、相手を傷つけないようにつく、優しさからの嘘もあります。
これは、相手が傷つくことが、想像できるから嘘をつけるのです。
そして、相手を傷つけたくないと意識しているからなのです。
カサンドラ症候群の夫は、そこらへんの力が弱いようです。
例として、誕生日課題があります。

ミラーニューロン

ここも、正確にお伝えしたいので、本書からそのまま引用させて貰います。

相手を傷つけないためには、相手はどう思うのかということを想像しなければなりません。
私たちは脳にミラーニューロンという神経細胞があり、他者の行動を見ると同じ反応が生じることで、生得的に他者と同じ体験ができると言われています。
その神経細胞が、他者の行動と同期することで、他者の立場を理解できるという考え方です。

「空気が読めない夫と、突然キレる妻」の心理学より

子供の頃に「自分にされていやなことを、人にしてはいけない」と教わります。
この考え方は、行動の結果として生じる相手のダメージを理解し、予測し、自己制御する際に役に立ちます。

「空気が読めない夫と、突然キレる妻」の心理学より

「自分がいやではないなら、それはしてもよい」という原則ではないのです。
他者の視点で見ることができない人は平気で「自分はいやじゃないから」と真顔で言い周囲を驚かせます。

「空気が読めない夫と、突然キレる妻」の心理学より

何だか、「やっぱりダメじゃん」ってなりそうだけど、補える方法があります!

嫌なことを人に、しないでいられるかは、他者のこころについて一般的な知識が獲得されているかどうかとも関係しているというのです。

どういうことがいやなのか、記憶していければ、他者の意図や感情を理論体系として検索し、いやなことをさけることができるとのことです。



”こういう場合はこうする”みたいな経験や情報を蓄積していって整理し、状況に適した対応をその蓄積した情報から引き出せるようにするってことかなと、思います。


まぁ、夫側に、妻との関係をよくしたいという思いがあることが前提ですけどね…。

次の記事で、再建について書いていきますが、夫も何とかしたいと思っているものの、諦めている人が多いとか。
関係の再建には、そんな夫に、妻が、「まだ諦めていない」「あなたと、うまくやっていきたい」と伝えることが、大事だそうですよ。

Minori
Minori

人って、嫌なことや不安なことがあっても、それを理解してもらえると楽になれることがありますよね。
たとえ、状況が変わっていなくても、心強くなれ立ち向かう勇気さえ湧いてきます。
それを失ってしまっているのがカサンドラ症候群の人たちです。

特に、愛着不安を抱えている人には、厳しい環境だと感じます。
相談する人を間違えると、さらにひどい状況になったり…。

カサンドラ症候群や発達障害の知識を持っている人に相談することをお勧めします。


タイトルとURLをコピーしました