ひらめき脳に変わる3つの法則
前の記事、自分の脳内の記憶にアクセスする方法で、アイデアを効率的にひらめくようになるには、埋もれた記憶にアクセスできる「言葉」を増やすこと、それには、3つの脳内神経ネットワークが協調し、気づき、ぼんやりすることが大事だと、書きました。
この記事では、もう少し具体的な方法を紹介していきます。
この記事は、菅原洋平氏の「ぼんやり」が脳を整理するを、参考にしています。
著者は人間の脳がひらめき、大きく前進するときに見られる共通点として、次の3つを挙げています。
- 気付く
- ぼんやりする
- 自分を外からみる
1.気付く
最初の段階は気づきをつくることです。
そのやり方として、エラーレスラーニング、スモールステップの設定、「○○出来た」を口癖にする、新知識の学習より再学習に重点をおくことが紹介されているので、まとめてみました。
実行系ネットワークとセイリエンスネットワークの調和が、気づきを作る
気づきを作るには、実行系ネットワークとセイリエンスネットワークの関係が大きく関わってきます。
セイリエンスネットワーク(切り替えスイッチ)がうまく働いていないのに、実行系ネットワークが働きすぎると、手当たり次第チャレンジして空回り状態になってしまいます。
気持ちばかりが焦って、やったことが全然身につきません。
逆にセイリエンスネットワークは機能しているものの実行系ネットワークがうまく働かないと、自分からは行動せずに支持を待つだけになってしまいます。
自分のやっていることに疑問を持たないので、ちっとも発展しません。
両方とも、課題に取り組む努力はしているのだけど、気づきは生まれてきにくい状態です。
やる気を出すには、スモールステップで脳に成功体験をたくさん作ることが重要
理想的な自分への課題の与え方として、 半分は自分だけで解決できるが、もう半分は自分の力だけでは解決できないぐらいのものがいいらしいです。
そのような状況になると、内側からコンコンとやる気が湧いてくるそうです。
確かに、簡単すぎるものは、やり遂げてもいまいちだし、難しすぎると投げ出したくなりますね。
エラーレスラーニングとは、「誤りや失敗をさせない学習法」で、発達障害のお子さんや記憶障害の方のリハビリに用いられているそうです。
エラーレスラーニングのひとつにスモールステップがありますが、これは、大きな成功を目指して、挫折するより小さな成功を積み重ねることに重きをおきます。
成功体験を積み重ねるには、作業を分割した方がうまくいきます。
○○出来たという言葉を習慣にする
作業を細分化し、確実にできたことだけを、「○○が出来た」と言葉にします。
普段、発している言葉すべてが脳をつくり、その脳によって行動がつくられるので、ひらめき脳に変わるには、まずこの「○○が出来た」という言葉を使うのを習慣にしましょう。
新しいひらめきには、新知識の獲得より、既存知識の再学習がおすすめ
脳に、日々小さな成功を積み上げるには、他人に説明できる言葉を使いことが大切だそうです。
わかっているつもりでもうまく説明できない言葉は、まったく知らない人に説明できるレベルまで学びなおすことが大事で、この面倒で回り道に見えるようなことが、ひらめきの最短距離になるそうです。
たくさんの情報は、不安や焦りにつながる
著者は、脳を、情報を消化する内臓に例えて、明確な目的もなく、とりあえず情報収集するのは、とりあえず、なんでもかんでも食べてみるのと同じで、セーブが必要だと言っています。
知らない情報に触れると、それが自分にとってどうでも良いことでも、知っておかなければならない気持ちになり、焦ります。
それは、知らないことを見たり聞いたりすると脳内では、ノルアドレナリンが急激に増えるからだそうです。
ノルアドレナリンは、注意や集中を司る物質で、高い集中力を生み出しますが、同時に不安や焦りの感情を作る作用もあります。
情報をセーブしたら、大事な情報を逃してしまうのではと、心配になりますが、それこそ、ノルアドレナリンによってつくられた焦燥感だそうです。
ひらめき脳には、人との対話が不可欠な理由
驚き、狼狽し混乱しているときに、誰かに話をしてみたら、落ち着き、たいしたことがなかったと感じることがありませんか。
これは、あふれかえっていた(混乱していた)情報が、一つの言葉によって関連付けられ、秩序が出来るからだそうです。
対話のメリットは、何よりも、相手から自分にはない語彙を貰え増えていくことです。
語彙が増えることは、それだけ記憶にアクセスできるアクセスコードが増えることなので、アイデアもひらめきやすくなるということです。
2.ぼんやりする
2番目は、ぼんやりすることです。
それには、デフォルトネットワークが鍵になります。
デフォルトネットワークには、情報をまとめて答えを出す役割があります。
ただ、このネットワークが、働きすぎると脳が勝手にいろんな感覚や思考を作り出してしまい、ありもしないことに、ぐるぐると悩んでしまうことになります。
ぼんやりにも良いのと悪いのがある
よく、話をしてて、別の考えが浮かび、「聞いてなかった」となったり、必要なものを取りに行って、「何しに来たっけ?」となったりすることって、私はすごくあるのですが、それは脳内のネットワークのバランスが崩れているからだそうです。
デフォルトネットワークが最も働くのは睡眠中で、睡眠は脳にとって、ネットワークのバランスを保つために重要な作業になります。
睡眠中に、脳は情報整理をしているのですが、睡眠を削り、限界まで仕事をして実行系ネットワークを働かせすぎると、脳は、昼間にも情報整理をしようと、ぼんやりしてしまい、「何だっけ?」となるようです。
なので、集中力を高め仕事の成果をあげるには、戦略的に適切なタイミングで「良いぼんやり」をつくることです。
知的作業を維持する限界は90分、ひらめきが生まれやすいのも90分毎
大学の授業は90分ですが、これは、知的作業を維持する限界の時間で、小腹がすく、のどが渇く、煙草を吸いたくなるのも90分ごとだそうです。
ぼんやり時間は、脳が休憩しているのではなく、情報をまとめる作業をしています。
なので、仕事がはかどっていても、 作業の成果を上げる必要な行為だと考え、作業を止め、意識して90分ごとに、ぼんやりすることを勧めています。
それが、悪いぼんやりをなくし、ぐるぐる思考を防ぐことになります。
ぼんやり時間をつくる6つの方法
著書のなかで、ぼんやりをつくるための、6つの方法が紹介されています。
- 焦点を合わせない
目の焦点を当てないと、思考がストップして頭が働かなくなります。
これが意図的にぼんやりしている状態で、脳内ではデフォルトモードネットワークが使われています。 - 聞きなれた音楽を繰り返しかけたり、カフェなどのざわついた場所に身をおく
聞きなれた音を繰り返し聞いていると、脳はその音に対する注意が低下していきます。
それで、実行系ネットワークが低下しデフォルトモードネットワークが活動し始める。 - お尻を締めて歩く
実行系ネットワークを低下させるには、体に注意を向け続ける。
肛門を締めると自然に姿勢が良くなり、体の中心軸が固定されるので、体の無駄な力が抜ける。 - よく、噛んで食べる
食べ物を噛むという行為は、歩くと同様、テンポある運動で、ぼんやりに活用できる。
ガムを噛むとセロトニンの分泌が促されて気持ちが落ち着くのが知られているように、食事の時は、よく噛んで食べると良い。
出来るだけ、テレビなどは消して。 - 水回りに時間を費やす
この水回りとは、入浴や歯磨き、洗顔のこと。
これらを丁寧に時間をかけて行う。 - 眠りはじめにまどろむ
眠るのに少し時間がかかるのがちょうどよい。
3.自分を外からみる
いよいよ、最後の法則3で、ひらめきがおこります。
ひらめくときは、実行系ネットワークとデフォルトネットワークが相互に働きます。
情報収集とまとめ作業が、リアルタイムでめまぐるしく行われます。
メタ認知は、ひらめきだけではなく、目標達成にも必須能力
《metaは、より高次の、の意》認知心理学の用語。自分の行動・考え方・性格などを別の立場から見て認識する活動をいう。
コトバンクより引用
ひらめく瞬間、脳は自分から離れるそうです。
つまり、メタ認知が働いているときに、ひらめきが下りてくるのだそうです。
メタ認知は大きく、モニタリングとコントロールという二つの働きをしています。
自分が今、何を考えているのかをリアルタイムで把握し(モニタリング)、その考えがちゃんと目的に合っているか、脱線していないかを見極め、必要に応じて修正を加えます(コントロール)。
自分の中にもうひとり、コーチがいるような感じです。
このメタ認知を高めるには、工夫したことが結果にあらわれやすい作業をするのが最適だそうです。
自己裁量で結果が出せる作業、例えば、料理やガーデニング、ゴルフなど趣味活動や、日常的な洗濯や靴磨きなどです。
いかがでしたか。
ひらめく段階って、インプットして、整理してアウトプットする。
そういう作業と似ていると思いました。
物忘れがひどい私としては、良い睡眠をとり、悪いぼんやりが出てこないようにしなきゃ!と切実に思いました。
それと、記憶へのアクセスコードの言葉を増やせば、物忘れも軽減するのではと、ちょっと明るい気分になれました。
記事のなかの何かひとつでも、参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。